付け木ってぇのは、ま、簡単に言やぁマッチのことでして。
幅が一センチ、長さが十センチくらいの
薄い木の先に硫黄が塗られていて、火を起こすのに使われてました。
何束かまとめて背中にしょった籠の中に入れてあるのを売り歩いたんです。
昭和の始めまではまだ、そこいら中にあった。

金ちゃん、背伸びして声の主を探しました。
で、声の主を見つけたは良いのですが、そのまんまの姿勢で
固まっちまった。
まるでミーアキャットみたいですな。

「なんだい、あの子は。あんな可愛い子、初めて見た…」

金ちゃんが驚くのも無理ありません。
師走の人ごみの中、付け木を売り歩くのは絶世の美少女でありました。

「はぁぁ…世の中には、あんな可愛い子が居るのかねぇ…そうだ!」

金ちゃん、ゴム長靴をはいたまま、付け木売りの少女に向かって
走り出します。
がっぽがっぽと長靴が派手な音を立てまして、驚いた女の子が
振り向いて悲鳴をあげました。

「きやぁぁぁぁぁぁ」

「うわぁぁぁぁぁ」いたって気の弱い金ちゃん、一緒んなって叫びました。

「あ、あなたどなたですか」

「え。あ、あたし金ちゃん。ごめんよ、驚かしちまって。
あのさ、付け木一つくださいな。焚き火すんのに丁度良かった」

「あ、ありがとうございます」
嬉しそうに頭を下げる、その様子がまた可愛らしい。