その翌日、近江の国。
真っ暗な夜道をふわふわと提灯行列が進んでいる。

「人間の中にも割合まともな者がおるのですな」
先生から話を聞いた油すましは、得心したように言った。
その背には、大きな風呂敷を背負っている。

今まさに、宿替えの最中なのだ。
道中を見る者が居れば、さぞや魂消ただろう。
噂に聞く百鬼夜行とはこのことか、と腰を抜かしたに違いない。
先生と油すましを先頭に、ぬりかべ、ろくろ首、ぬっぺっぽう、二口女。
ありとあらゆる妖しのもの達が後に続く。
皆、賑やかに踊りながら進んで行く。
それにつれて提灯が揺れる。
元来、妖しのものは陽気な存在なのだ。

一行が着いた先は荒れ果てた寺である。
今はもう、近づく者とて無い。
一行にとっては、願っても無い住処であった。

その日から数えて今日が三日目。
毎晩楽しげに酒宴が続いている。
近隣に住まう妖しのもの達も、酒肴を手に挨拶に訪れる。
今夜もまた、愉快な夜が始まろうとしていた。

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