老人の顔が赤くなった。
「わはは、これは有り難い申し出じゃの。なら、すまんが
一つだけでええんじゃ。ひっさつわざ、とやらを
教えてくれんかのぅ」

直美はこう見えてもゲーマー歴は長い。
特に格闘ゲームは得意中の得意であった。
「ここをこうして、同時にこのボタンを押すんです。
そう…。右、右、○のボタン。そう」

「ほほう。なるほど、こりゃええ。すまんの、
お嬢さん。孫に買ってやったはええが、相手すら
してやれんのでなぁ」

「お孫さんて、この間一緒に居られたお子様ですか」

「うむ。可哀そうに、親が離婚調停の最中での。
結果が出る間、わしが面倒をみとるんじゃ」

本当なら、もっと外で遊んだ方がええんじゃが、と
老人は淋しげに俯いた。
「わしは膝が弱くての、孫を連れてここまで来るのが
精一杯じゃ」

しばらく練習を続けたが、老人は一向に上達しない。
「すまんのう、不器用な年寄りだでな、迷惑かける」

「いいんです。もう二、三日練習したらきっと出来るように
なりますよ。良かったら明日もいらしてください。
大事なお客様へのアフターケアーです」

磯部と名乗る老人は直美に礼を述べて売場を後にした。
バイトの子が呼んでいる。
いつの間にか売場はお客様で溢れていた。

「いけない。さ、仕事仕事」
直美はいつもの笑顔を振りまきながら、カウンターに戻った。

四へ