紅葉が彩る山間の道を
一台の車が走って
いた。 かなり旧式の
その車には、一組の
家族が乗っていた。
観光シーズンを少し
外れた今、他の車と
すれ違う事もない。

ハンドルを握る男には
行くあてが無かった。
男の名は今岡裕二。
助手席に座る妻、
真美は、ぼんやりと
外の景色を眺めて
いた。

後部座席には、遊び
疲れた子供が眠って
いた。
姉の初音は小学5年。
弟の拓人は小学3年。
近所でも評判の仲
の良い姉と弟で
あった。

「少しゼィゼィ言い
始めたわね。」
真美がボソッと言った。

「喘息か。それももう
すぐ終わりだ。」

裕二は一家心中する
場所を探していた。

最初のつまずきは
簡単な仕事の失敗
だった。
だが、いつの間にか
全ての責任が裕二に
背負わされ、
ようやく課長にまで
昇進した会社を
辞めさせられたのが
一ヶ月前。

まだ家のローンも
払い終わらず、次の
仕事も決まらない。

内容さえ選ばなければ
いくらでも仕事はある
のだが、裕二の
安っぽいプライドが
それを拒否した。
とうとうサラ金に
手を出し、取り立ての
葉書が届き始めた。