「ごめんなさい?」

「そう。ごめんなさい、全部僕が悪かった、許してください、っていうことよ」

翔太は大きな目をさらに大きく見開いて早智子を見つめた。

「おとさん、なんかわるいことしたの?」

心配そうな翔太の頭を撫でながら、早智子は笑った。
「さぁ、会社のことだから母さんにはわからないわ。でも多分大丈夫よ。ほら」

階段を降りる音がする。「腹減ったー」と雄叫びをあげながら敏夫が居間に入ってきた。

「おとさんだ」
途端に翔太が飛びつく。
「おとさん、へいき?もうごめんなさいすんだ?」

「おいおい、重いって…ごめんなさいって何だ?」

朝ご飯を用意しながら早智子は笑った。

「申し訳ございません。は、全く仰る通りで」

「あ。それか!」

敏夫も笑い出した。
「大丈夫だよ、なんとかゆるしてもらったから」
「よかったね、おとさん」

明るく笑う翔太のおかげで、早智子の胸にかかっていた雨雲も消えた。

(この子の笑顔には助けられるわ)

「昼過ぎには晴れるらしいよ。どっか行こうか」
翔太に話し掛ける敏夫には、先程の電話の尖った気配が無い。
彼もまた、翔太の笑顔に救われているのだろうと早智子は確信した。


三へ