昔々のことじゃった。

山の奥のその奥に、大きな鬼が住んどった。

もじゃもじゃ頭に角二本、松の木みたいな腕じゃった。

ひと足歩くとズシンと揺れる、ふた足歩くとまた揺れる。

村のみんなは怖がって、近づこうとはせんじゃった。


けれども鬼は本当は、とても優しい鬼じゃった。

いつもいつでも一人きり、なんとか友達欲しかった。


ある日一人の旅人が、道に迷って倒れてた。

鬼はビックリ驚いて、助けようと頑張った。

薬になるよな草をつみ、冷たい小川の水を汲み、
なんとかしようと頑張った。

けれども、うまくいきません。

鬼の大きな手も足も助けることができません。


鬼は優しく持ち上げて山をおりて里に出た。

里のみんなは驚いて、鬼に石を投げつけた。

鬼は顔をかばえない、両手で旅人かかえてる。

赤い赤い血が流れ、鬼は背を向けしゃがみこむ。

優しくそっと旅人を下ろして山へ逃げてった。

里のみんなは気がついた、その時初めて気がついた。


本当は優しい鬼なんだ、みんなはやっと気がついた。


けれども鬼はもう二度と里には降りてこなかった。

山の奥のまた奥で、一人で暮らしていきました。