さて。いよいよ書き始めます。
とはいえ、先は長い。
おそらく、今までで一番長いお話になります。
誠に勝手ながら、こればかりはゆっくりとお付き合いください。

まさに連載小説でございます。

それではどうぞ。

十兵衛の登場です。





柳生の里は、杉木立が続く大和路を歩き続けた先にある。
一見して普通の百姓家が並ぶ里だが、所々にある柳生の屋敷だけは
必要以上に堅牢な作りが只ならぬ雰囲気を醸し出している。

その縁側で、十兵衛はのんびりと竹細工を作っていた。
次の村祭に、里の子供らにあげる竹とんぼだ。
見ると、すでに二十あまりの竹とんぼが出来上がっている。

「よし、と。これで二十二。何とか間に合いそうだ」
子供らの喜ぶ顔が目に浮かんだのだろう。
にんまりと微笑む。
稀代の剣豪としては、あまりにのんびりとした風情ではある。

「若。」
背後から呼びかける声がした。

「又佐か。相変わらず渋い顔つきだな」

「見もしないで何をおっしゃいます」

「声で判る。叔父貴殿の呼び出しか」

十兵衛が振り返ると、信楽焼の狸のような老人が控えていた。

「ほれ見ろ。やはり渋い顔だ」
十兵衛が笑う。

「爺の顔が渋いとすれば、それは若のおかげでございましょう」

「判った判った。あと一つ出来たら終いなんだ」

「叔父上様と竹とんぼ、いずれが大事でございます!」

「無論、竹とんぼだ。というよりは、里の子供達だ。
民百姓あってこその侍だぞ、そこのところが
叔父貴殿は判っておらぬ」

「お小言を頂戴するのは、この爺でございますゆえ」
しょうが無いな、小さくぼやき、十兵衛は立ち上がった。

二へ