「ぐ、ぐげぇ」
竹とんぼを引き抜いた途端、血潮が噴出する。

「天海様っ!」布袋が転ぶように近づく。
天海の体から水銀がぼとぼとと落ちていく。
その中から現れたのは、十兵衛が初めて会った時の
年老いた天海であった。

「く、くそ…まさかこのようなものに」
悔しげに呟く天海に、先ほどまでの勢いは無い。
血が失われると同時に天海は、その年齢どうりの
体に戻った。

嫌悪を隠すことなく、太郎丸が叫ぶ。
「もうお終いだぞっ!観念しろよ、坊さんっ!」

だが天海にはまだ、布袋の腐り袋があるのだ
布袋が袋を開けた。腐臭が漂う。
「さすがじゃな、十兵衛。だがこの袋が有る限り、
何度でも天海様は甦るのじゃ。さ、天海様、
この前いれた吉原者が良い感じに腐っている頃合いですぞ。
早うお入りくだされ」

「すまぬな、布袋…」
十兵衛が止める間も無く、するりと袋に入り込む。
布袋は袋ごと、大きく跳ねて窓から飛び出した。

「しまったっ!」
階段を駆け下り、五重塔から出た十兵衛を
待っていたのは、首から下を水銀で包んだ天海であった。
その顔は既に若返っている。

百三へ