「この辺りの企業が尻を向けて座らないというのも
国家的規模のデマゴーグだ。
したがって、我々が何をしようと祟られる事は無い」
疑わしげな隊員を尻目に、樹林はつかつかと塚に近寄った。

「隊長、止めてください。我々には貴方が必要だ」

「そうですよ、止めてください。そんなことは我々がやります」

樹林は歩みを止め、振り向きもせず言った。
「ばかやろう。縄谷、お前には可愛い嫁さんが居るじゃないか。
多中。お袋さん、大事にしろよ」

そして樹林は、ゆっくりと右手を上げていった。
握り拳である。手の平側を上に向けている。
恐ろしい事に、その中指だけがゆっくりと突き出されようとしている。

「あぁっ!それは最上級の侮蔑のサイン!隊長、なんて無謀な事を」

「進駐軍がどうなったか判ってるんでしょ?!」

「だからこそだよ」
樹林は数分間、そのままのポーズを続けた。
そしてゆっくりと倒れていった。

「隊長っ!」
「しっかりしてくださいっ!」

樹林は、あまりの恐怖に気絶していたのだった。


結局、今に至るまで祟りは起きていない。

樹林は、やっぱりな、と胸を撫で下ろしている。


(よかったぁぁ…あのサインが平安時代の人に
判るはず無いもんねぇ…ほんと、良かった…)

行け行け都伝隊っ!

嫁はんの冷ややかな視線なんかに負けるなっ!