大きく深呼吸をする。
「と、とりあえず助かった。ここなら水は入ってこない」

ドアをそっと開け、外の様子を伺う。
「うわぁぁぁっ!」
散水栓がこちらを見ていた。
廊下にある散水栓が全て正岡を見ていた。

その中で一番近くの一本がスルスルと伸び、放水を
開始した。

「だめだ、逃げられない…」
閉めたドアに散水栓のホースがからみつく音がした。
またロックされてしまったが、ドアに窓はついていない。
室内にまで放水される心配は無かった。

「明日の朝までの辛抱だ、工事関係者が来たら
あきらめるに違いない」

その隙を見て逃げるしかない。
とりあえず、この部屋にいる限り安心だ。
水は襲ってこない。
正岡は冷えた体を抱きしめながら、少し眠りについた。

だが、水は容赦なく襲ってきた。
「何故だ、物置だぞっここはっ!」

水は天井から大量に降り注いでくる。

漏水ではない。
スプリンクラーからであった。
ビルの中にいる限り、水からは逃げられないのだ。

九へ