「なにを馬鹿なことを。紫近に何用が有るかは知らんが、
この仁衛門を見くびってもらっては困る」

仁衛門は持っていた杖を両方同時に地面に突き立てた。
するり、と抜き放つ。その杖は仕込み杖であった。
中から現れたのは、奇妙に細い刀剣。日本の刀ではない。
ふるふると、しなやかに揺れている。
仁衛門は両手を広げ、大きく構えた。

「参る」
巨大な蝶のように、仁衛門は僧兵の群れの中で舞う。
左右の剣が、ひゅんひゅんと音を立てる。
残像しか見えぬ速さで仁衛門の周りを剣が走った。

僧兵達は手にした錫杖で受け止めることも出来ず、
次々に倒れていく。
何とか受け止めた者もいたが、仁衛門の剣は錫杖を巻き込むように
しなり、相手の頭を落としていく。
驚くべきことに、相手を倒すのは剣だけでは無い。
仁衛門の足が高く上がり、相手の頭を砕く。
あるいは低く走り、相手の膝を刈る。

六十一へ