確かに空が真っ暗だ。
麻里と志郎は執事の言葉に従うことにした。
執事に導かれ、玄関へと向かう二人は、
途中にある庭園の木々に目を奪われた。
丁寧に剪定されてあるそれは、いずれもが
何らかの動物の姿を呈していたのである。

「すごいなぁ。あれ、ライオンだ。あっちはサイ。
あれは象。あ、熊もいる」
子供のようにニコニコとはしゃぐ志郎を
ギネス級の『侮蔑に満ちた眼差し』で睨みつけ、
麻理は先を急がせた。

「んなもん、どうだっていいの。先に行くよ」

「ねぇねぇ。知ってる、シャイニングって映画。
あれに出てくるホテルの庭にそっくりだね」

知っているどころではない。
怖がりのくせに、麻理はホラー映画が大好物である。
シャイニングを見ていない筈が無い。

「だから何よ」

「動いたら面白いよねぇ」

「ふぅん。じゃ何か、あ・ん・た・は、
廊下が血の洪水で溢れるわ、
不気味な双子の姉妹がにっこり微笑むわ、
腐った女が抱きつくわ、
狂った男が斧を振りかざして襲ってくるわ、
それでも面白いって言えるのか」