部屋の外で、今見たものを思い返す。

確かに何かが居た。
見間違いとは思えない。
佳織は、もう一度風呂を確かめようと部屋に戻った。

隙間様。
その言葉だけが頭の中を廻る。

フライパンを握り締め、ゆっくりと風呂を覗いた。
蓋はきっちりと閉じている。

フライパンをかざしたまま、佳織は思い切って蓋を蹴り飛ばした。

中には何も無かった。
空っぽの浴槽が有るだけだ。

へなへなとその場に座り込む。

やはり気のせいだった。
四つん這いのまま、部屋に戻ってソファーにへたり込んだ。

「隙間様…か」

ぼそりと呟く。
さっきのは本当に隙間様かもしれない。

だから姿を消したんだ。
「まさかね」
己を勇気づけようと、無理矢理明るく笑った。

その笑顔が凍り付いた。
押し入れに隙間が開いている。

僅かに開いた隙間から、指が現れ、戸に掛かった。

ず。

ずず。

ずずず。

少しずつ押し入れの戸が開いて行く。