翌日、いつものように
頭を撫でようとする綾
に、イブは己の尻尾の
毛をつけた。

5kmまでの範囲なら
これで綾の動向を
察知できる。

乱蔵も出かけ、下の
息子さんも保育園に
行った。 
家の中にはイブと、乱蔵の奥さんが残って
いるだけだ。

二階にあがると、
きゃー姉さまがコタツ
から出てくるところ
だった。

「おや。先生。何やら
浮かぬ顔つきですのう
。」

イブは一応、今までの
経緯を姉さまに話した。

「呂后…それはまた
大仰な者がのぅ。
まぁ、この家の結界は
ワシが守っておく
からの。気にせず、
綾嬢ちゃまを守って
おくれ。」

そう言い残し、きゃー
姉さまはまた、コタツ
に戻った。

確かにいつもなら、
この家を守る結界は
きゃーが張るもので
充分であった。

イブほどではないが、
きゃーもまた、歳を
経た猫又であり、その
能力は時に手助けと
なったのだ。


余談だが、大抵の飼い
猫は大事にされた家に
結界を張って守って
くれている。

閑話休題。


「おや、イブちゃん。
どうしたの。ご飯は?」

つくね家の主婦、
いぶが話し掛けてきた。

同じ名前を持つ彼女を
イブは、母親同然に
思っていた。

喉を鳴らし、甘える。
伝説の猫又も母親の
前では子猫同然なのだ。

今のところ、綾には何
の異状も無い。


だが、幸せな時間は
一本の電話の音で
破られた。