しばらくは戸惑っていた祐子だったが、意を決したように
話し出した。

その手紙の差出人は、祐子のお馴染みの客である。

植物学者というその男性は、学会の帰りにあきさくらに
連れて来られた。
そこで出会った祐子に一目惚れしたらしい。

毎晩のように通い詰め、とうとう結婚まで申し込んだ。
三歳になる娘も男を気に入り、パパと呼び始めた。

ところが、先週、男は突然オランダの大学に招かれたのである。
一緒に来て欲しいと言われ、祐子は迷った。

天涯孤独の身の上だが、娘のことや、異国の地での生活を
思うと、どうしても踏み切れない。
迷っている祐子に、今日手紙が届いた。

「それがこの手紙なんだって。でね、祐子ちゃんが開けたら、
これだけが入ってたんだってさ」

あきさくらのママが取り出したのは、アジサイの花だった。

八へ