カウンター席には椅子が10脚。
テーブル席が4つ。
小さな飲み屋だ。

いつ行っても常連であふれている。
店の主人は、いつ見ても朗らかに笑っている。
奥さんとの掛け合いを楽しみに来る客も多い。
大柄らな熊に似た店主は、心底から奥さんを
大切にしている。
その様子を見るのがまた、何よりも客を癒した。

もちろん、自慢の料理も酒も文句の付け所が無い。
特に店主が作るつくねは絶品だった。

常連の一人、さとやんが珍しく飲み続けている。
「さとやん、どうした。今日はえらく荒れてるな」
もう一人の常連、てっちゃんが心配そうに声をかけた。
さとやんはそれほど呑める方ではないのだ。

「あぁっ?あんな、てっちゃん。今日は呑まな
帰れへんねや。ほっといてんか」

店主もたまらず声をかけた。
「佐藤さん、大丈夫ですか?あまり飲みすぎると
娘さんが心配されますよ」

「熊さんか。あんたは黙ってつくね作っとき。
今日な、家にな、娘の彼氏が来んねん。
あれや、娘さんをくれっちゅうやっちゃ。
わしな、会うのいややねん。そやから呑んでるんや」

店主はしばらく黙っていたが、何事か思いついたようだ。
二へ