「そう。本当ならね、秋。秋は良いなぁ、飯が美味くてさ、
俺も作ってて楽しいからなぁ」

熊は、うんうんと頷き、話を続けた。
「でもね。実は鮭ってのは夏でもオッケー。」

「夏?全然時期はずれじゃない」

「まあそう思うのも無理はないね。でも、初夏の北海道近海に回遊する
鮭ってのは一味も二味も違う。
産卵のために回遊してくる鮭とは違うからね。
全く別物と思っていい。
外海でたっぷり食べた餌を食べた若鮭なんだ。
卵とか、白子とかに養分を取られないだろ?
だから脂がたっぷりと乗って最高に美味い」
うっとりと目を閉じながら熊が一気にまくしたてた。
本当に、心底から鮭が好きなのだ。

「熊、判ったから。落ち着けって」
ねこやは、熊との会話が何よりの肴らしい。
また一本、お銚子が空いた。

やはり、この店は気持ち良い。
枝里子はしみじみと思う。

「あ、枝里子さん。これ食べてみて。今日から始めた冬メニュー」
枝里子の前に、汁椀が置かれた。

六へ