「おかん」

「うわぁ。びっくりした。あんた、よう一人で起きてこられたな」

「これ、受け取ってくれや」
照れくさそうに差し出した包みを母は訝しげな顔付きで開けた。
中からは、小さな鍵が現れた。

「なにこれ」

「プレゼントや」

「プレゼントて…あんた、一体何しでかした!」

「なんでやねん。ええから表に出てみ」

表に出ぇて、母親に喧嘩売る気かいな、
なんやいなほんまに、
ぶつぶつ言いながら母は玄関から外に出た。
そこにあったのは、電動自転車であった。

「なにこれ。あんた、これどしたの」

「バイトの給料で買った。おかんの自転車、サビだらけで
キコキコいうてるやん。これやと楽に仕事行けるで」

「給料て…ギター買うのやろ」

「ええねん。来年またバイトして買うわ」

「ほんまにええのんか。そうか、ありがとうな。はは、自転車やて。
嬉しいなぁ。ありがとうな」

「来年もまた、石山設備行くからな」

「そう。えらい気に入ったやんか」

「また、弁当作ってくれるか」

任しとき、と母は胸を叩いた。

「頼むで、おかん」
長生きしてや、と続けようとした浩を置き去りにして、
母は嬉しそうに自転車を漕いで行った。
笑い声が遠ざかって行く。
その背中に、浩は深々と頭を下げるのであった。