『まず、君が今置かれている状況を説明しよう。
君が出会ったカズィクル・ベイという人物には、
もっと世間に知られた名前がある。
それをトルコ語で言いあわわす、
いや、言い笑わす、違う!言いあららす、うぅん』

「言い表す?」

『そう。あ。駄目だよ、ハイかイイエだけ!」

「…ハイ」
大丈夫か、この人?やや不安になりつつ、麻理は続きを待った。

「トルコ語でカズィクル・ベイ。通常ならばドラキュラという。
そのドラキュラが支配する館に、今、君は居る。
外は嵐。どんなに悲鳴をあげても誰にも聞こえない。
血を吸われ、君自身も闇の世界の住人になってしまう。
そうなってもいいか?」

「い、い、いいいえっ!」

うんうん、ね、やっぱりドラキュラじゃん。
だよねー、あの風貌で、あの登場の仕方。
ドラキュラ以外の何者でもないじゃん。
あたし見る目あるー
あっはっは、と投げやりに笑う麻理の瞳が虚ろである。

どーしよー。
こないだの悪魔院長どころじゃないじゃんー
ドラキュラだよ、ドラキュラ。
勝てっこないよんよんよん
壊れ始めた麻理を店長の声が正気に戻した。

『今から僕は、吸血鬼退治の道具一式を用意して向かうから。
絶対に助けるから。希望を捨てないで。
逃げるなり隠れるなりするんだ、いいね』

「ハイッ!」

『そうだ、ドラキュラの弱点を教えよう…、ああっ!』

「どうしたんですか店長!」

『充電が切れ』

ぷつ。
つーつーつー

切れた。
肝腎のことを話す前に、ぷつって。