「これが何か」

「お父さんね、その写真を持ってきて、あたしに頼んだのよ。
こんなふうに三つ編みにするのって難しいですか、って」

「え…」

「あなた、来週卒業式でしょ?
お父さんは、その時、あなたの髪を
三つ編みにしたいんだって。
妻が生きていたら、きっとそうするからって。
でも、自分は不器用だから、本とかを見ても上手くできない。
御面倒ですが、なんとか教えていただけないか。
そう言ってここで、今あなたが立っているその場所で、
うちの若い従業員に頭を下げたのよ」

「お父さんが…そんなことを」
結美は汚れるのも構わず、床に座り込んだ。
ボトボトと涙がこぼれる。
「お父さんが…」

店長が結美の肩に優しく手を置き、微笑んだ。
「本当に不器用なお父さんでねぇ、大きな体を曲げて、
太い指先でちまちまとね。でもね、熱心なのよ。
きっと、あなたに喜んでもらいたかったのね」

結美の顔に洗いたてのタオルが押し当てられた。
「ここが美容室で良かったわね。タオルは沢山あるわ」
結局その日、結美はタオルを三枚使った。