ようやくペンションが見えてきた。
突然、姿を消したハッピーを探すために、
横山夫婦が表に出ていた。
大きな声で吠えるハッピーを見て、夫婦の顔に安堵が浮かぶ。

「ハッピー、どこへ行ってた…」
横山は息を呑んだ。

「何が有ったんだ、ハッピーッ?!」

ハッピーは横山の服に噛み付き、引っ張り始めた。
着いて来い、とでも言うように走り出す。

「どうした、何があるんだ」
その剣幕に驚いた横山がハッピーの後を追う。
難度か見失いかけたが、横山はようやく謙司が
横たわる現場に到着した。

「ここか?いったい何が…あぁっ!謙司君っ!」
横山の叫び声にハッピーの嬉しそうな声が被さって聞こえた。
謙司は、痛む手を振って答え、また意識を失った。



「あ、困りますよ。病院内に犬を連れ込まれては」

「すいません、この犬、介護犬なんです」
横山が咄嗟についた嘘に、看護師はまんまと騙された。
包帯をグルグル巻きにまいたハッピーの姿に同情したのかもしれない。

「さ、ハッピー。この病室だよ」
ハッピーは、大好きな匂いを嗅いだ。
眠る謙司の頬を舐めて起こす。

「うわ。なんだなんだ。ハッピーか!」
これ以上は無いというぐらいの笑顔を見せて、謙司が
身を起こした。

「どうだい、調子は」

「ありがとうございます。二週間ぐらいで退院らしいです」