そのピエロは、よくあるような
ファニーフェースクラウンではなかった。
陶器で作られた整った無表情な顔に、
手書きで涙が書かれていた。
スペイン風の衣装を付け、そう、丁度
アレグリアに出てきそうな悲しげな
ピエロだった。

彼女はそれをいたく気に入り、寝室の
飾り棚に置いていたのだという。

だが少しずつ異変は起こり始めていた。

仲間との飲み会で遅くなり、友達を部屋に
泊めた次の日の朝。

「あんたさぁ、何か良い事あったの?」
「え?何で?」
「あたしさ、ソファーで寝たじゃん。で、
夜中にふと気付いたら寝室から笑い声
聞こえてたよ。小さな声でクスクスって。」
「え~?寝ぼけてたのかな?」
「それじゃあ彼氏連れ込めないよ。」

友達を先に送り出し、彼女もいつものように
ピエロ人形にキスして出かけた。
陶器のヒヤッとした感触が好きだから、
何となく始めた事だが、その日の朝は
え?と思うほど暖かかったという。

続く