「なんじゃ。雁木ではないか。我等は箱根様の
命により、先を急ぐのじゃ。」

「そのことじゃ、その勾玉、そのままでは効き目が
有り申さん」」

「何?聞き捨てならんぞ」
烏たちが舞い降りてきた。キジムナーが化けた雁木小僧を
囲んだ。

「どうするというのだ」

「その勾玉、呪文を唱えねば地の龍は現れぬそうです」

「呪文とな」

「は。天狗様がその呪文、私に授けてくださいました。さ、その勾玉を我に」
天狗から勾玉を受け取り、キジムナーは呪文を唱えるふりを装う。
石ころを変化させていた偽物を烏に戻した。

「さ、これでよろしかろ。お急ぎなされい」

「む。すまぬな。とんだ不首尾をいたすところであった」
烏天狗は再び空に舞い上がろうとする。

「うまくいった。よし、これを持って早く先生の所へ」
キジムナーは、すねこすりの隠れている木立へ足を向けた。

「待て。雁木小僧」

「……はい!」
一瞬返事が遅れた。