何故だ。
なんで、こんな目に遭わなきゃならん。
くそ、やってやる。
反撃してやる。
何か武器は無いか。
モップとか、バケツでもいいのに
何一つ見当たらない。
ガラスを割ってナイフの代わりにするのはどうだ。
駄目だ、窓はワイヤー入りのガラスだ。
鏡も無い。

チキチキチキ

迫って来た。
楽しむように、ゆっくりと、ゆっくりと。

必死で鞄を探す俺の手に何かが触れた。
缶コーラだ。
はは、これでも飲んで頭を冷やせってか。

缶コーラ。
ああそうか。
いけるかもしれない。
俺は用意を整え、息も整え、女を待った。

「ひひひひひ」
カクカクと不気味な動きで近寄って来る。
カッターナイフが鈍く光る。
間近で見て初めて解った。
ワンピースの奇妙な柄は、全て血液だ。
元は白い服だったのだろうが、それが
返り血と己の血で暗褐色のシミを付けていたのだ。
恐らく、赤く見えるハイヒールもそうに違いない。
だが俺の血はやれない。