彼女の言葉が無ければ、今の俺は無いと思う。
学校や街中で、あからさまに俺の頬を見つめ、目をそらす人がいても気にならなくなった。

酷い時には、「あいつと遊ぶと痣がうつる」などと言われたものだが、
そのたび俺は、彼女との約束を守った。

嘲笑や嫌悪に笑顔で応える。
そうこうしている内、不思議なもので、友達が増え始めた。

それもこれも皆、みっちゃんのおかげだと感謝し、いつかまた必ず出会えると信じていた。


そして4月も終わりかけの或る日。
いつものように、寝ぼけた顔で起きてきた俺は、母を見て驚いてしまった。

泣いているのだ。

「どしたん」

訊ねる俺に、母は黙って新聞を差し出した。

そこに、みっちゃんが居た。

小さな白黒の写真だが、間違い無くみっちゃんだ。


『娘の将来を悲観した母親により殺害された』


「なにこれ」

新聞をもう一度読む。

娘の痣を悲観した母親が無理心中を図ったが、自分は死にきれず、警察に自首。

「だから、なんだよこれはっ!
みっちゃんは強いんだよ、俺よりなんぼも強いんだよ!
なんで母親に殺されなきゃならねぇんだよ」

母も姉も答える事ができず、うつむいていた。