「何度も何度も一人で遊んできたからね、強いんですよ。私、ぼろ負けしちゃいましてね」

「あらま」

「でね、明日は兄ちゃんが勝つからなって帰ったら、その夜に逝っちまった。勝ち逃げはズルいですよねぇ」

ヤバい。
直美はまた、横目で谷山を見ようとして止めた。
そんな事をしなくとも、床に落ちる水滴を見れば、谷山がぼろぼろと涙をこぼしているのが判ったからだ。

「本当にありがとうございました。今度は孫と遊ぶつもりです」

清水は深々と頭を下げ、売り場をあとにした。

「ありがとうございました」
谷山と直美の声が揃う。
「主任」

「なんだい」

「やっぱり、オモチャっていいですね」


「うん。オモチャがあるところには、必ず笑顔があるからね」

谷山はそう言うと、清水から貰った写真を大切にポケットに入れた。
自分の机の上に貼るつもりだ。
そこには、沢山のお客様から貰った写真が貼ってある。

その写真に写る人たちは皆、見事な笑顔である。

清水兄弟の笑顔は、その中でも一番の笑顔であった。