「よいか。わしが死んだ後、遺言通りにやってくれ。
じゃあね。みんな仲良くやんなさい」

煮干川権兵衛、享年108歳。
眠るような大往生であった。

遺族は早速、遺言書を開け故人の意志を確認した。
財産分与は恙無く終わった。
問題はその次からだ。

『一・わしの1/400ガンダムコレクションは、全シリーズ、フルコンプしてある。
中には、ブルークリア版Ζガンダムやピンククリア版シャア専用機五種類などという大変に貴重な物もあるので、末代までの家宝とすること。

二・葬儀会場にはわしのセレクトした曲を流すこと。わしゃ辛気くさいのは好かんので、ヘビーメタル中心じゃ。

三・葬儀が終わり次第、屋根から饅頭をまくこと。

四・戒名は次の通り。
彗星院権兵衛居士@極楽浄土

以上』




スコーピオンズのサウンドが薄く流れる会場には、ガンダムコレクションがズラリと展示されている。

権兵衛の友達であるガンコレマニアや、ヘビメタミュージシャンが会場を埋め尽くしていた。

「南無彗星院権兵衛居士~@極楽浄土ぉ~」
読経が続く中、彼等は皆一様に泣いている。

遺族は権兵衛の遺言通りに事を運ぶよう決めた。
文句を言いながらも、結局彼等は権兵衛が大好きだったのだ。

式が終わり、いよいよ饅頭まきである。
さすがに紅白饅頭をまくわけにはいかない。
悩んだ末、遺族はイカ墨饅頭をまくことにした。

深々と晴れ渡った冬空に黒白の饅頭が乱れ飛ぶ様は、誠に痛快極まりない。
皆は笑顔のまま、会場を後にした。

こうして権兵衛は、赤い彗星のヘビメタ爺ちゃんとして永く皆の記憶に残ったのであった。