彼女は三重県伊賀市の産まれである。
生家は陶房を営んでいた為、
幼い頃から、身の廻りは伊賀焼きで溢れていた。
父親は腕の良い陶工であり、特にそのビードロ釉は定評があった。
全国から買い手が陶房に訪れたという。
だが父は評判に驕ることなく、普段使いの器に拘った。
たまに窯を休める時は、父は彼女を裏山に連れて行った。

「茉莉、ここは秘密基地なんだよ」
そう言って微笑む父に茉莉は聞いた。

「秘密基地?宝物とかあるの?」

「宝?あぁ、そうだよ。とてつもない宝物が埋まっているのさ」

自然の溢れる伊賀の山で、茉莉は何不自由無く育った。
だが、彼女が小学校に入った年、一家は突然の不幸に見舞われた。
日頃から体の弱かった母が倒れたのだ。
膨大な入院費を捻出する為に、父は昼夜を問わず働いた。
元々、焼き物は一度火を入れたら、三日三晩不眠不休というのも
日常茶飯事である。
とうとう父は倒れ、母と連れ添うように逝ってしまった。
一家は離散し、彼女一人が親戚の家に預けられた。
六へ