恵美が嫁いでからも、薔薇の花束とケーキは毎年届いた。

「本当に何年分、頼んでおいたのかしら」
朋子は、とうとう確かめることにした。
先がわかる事が怖かったのだが、気になって仕方無いのだ。
贈ってくるのは、記念日メモリーギフトという会社である。
おそらく、前もって頼まれた贈り物を指定日に届ける
システムなのだろう。

電話の相手は、意外と簡単に教えてくれた。
『えぇと…はい、その贈り物なら、今後も続きますね。』

「え?ずっとですか。あの、失礼な話なんですが、お支払いは
きちんと済んでいるのですか」

『もちろんですよ。ええと…最初の一年だけが尚人様ですね。
その後は…恵美様からお支払い戴いております』

「恵美?」

『はい、一年だけの契約だったのですが、御自身で電話を
おかけになられまして、今後もお願いしたいと』

礼を言って電話を切り、朋子は号泣した。
おそらく、恵美は自分の小遣いで毎年毎年、母に花束が届くように
してくれていたのだ。

「親に嘘をつくなんて、本当に…本当になんて優しい馬鹿娘」

エプロンで涙を拭きながら、朋子は台所に立った。
恵美の大好きな黒豆を仕込む。
次に来た時に渡すつもりである。

黒豆は、ふっくら艶々と仕上がった。
高校時代、アルバイトばかりで真っ黒に日焼けしていた
恵美を思い出した。

「この際、いつまでも騙されてあげましょ」
黒豆を一つ、口に頬張り、朋子はそう呟いた。