「わしは、ここに残るよ。」

「なんで!?一緒に行こうよ!」

「そうよ、トラさん。一緒に行きましょうよ。」

「駄目なんじゃ。みなには内緒にしていたが、
わしはもう、目が見えんのじゃよ。
足手まといにはなりとぅない。
わし一人なら何とか物陰で暮らしていけるじゃろう。」

「駄目だよ、一緒に行こうよ!」

トラは穏やかに首を横に振ると、いつもの場所に戻った。
陽だまりの苔の上、トラが一番好きな場所に。

「トラさん!」

「日の高いうちに早う行きなされ。 
ハナクロさん、世話になったのぅ。
皆をよろしく頼む。」

「…わかりました。猫の森を見つけたら、
必ず迎えに来ますから。」

「おぅおぅ。ありがとなぁ。さ、早う行け。
皆も元気でな、ミニーちゃん、お母さんの
言うことをよくきくんじゃぞ!」

旅立ちの用意もそこそこに、皆は森の外に出た。
振り向くと涙がこぼれそうだったので、
全員が前を向いて走り出した。

ハナクロは、一度だけ振り向いてしまった。
トラが陽だまりの中で、ふくふくと笑っていた。

「必ず、迎えに来ますから。」
自分に言い聞かせるように呟き、
ハナクロは皆の後を追った。


9匹の猫達の長く、辛い旅が始まった。