通報を受け、警察は虐待の現行犯逮捕の為、母親の捜索に向かった。

救急車に乗せられ、兄弟達は病院に搬送されることになった。

その後は私が面倒をみると、祖母は約束した。

担架に横たわり、救急車に向かう雅樹は、林檎の木にお礼を言おうと身を起こした。
救急隊員が優しく声をかける。
「どうした、ぼく?寝てなきゃだめだよ」

「ちょっとだけ、りんごさんにありがとうっていうの」

雅樹は林檎の木を探したが、見当たらない。

「あれ?りんごさんがいない…おかしいな、ありがとうっていいたかったな」

雅樹に見つけられないのは当然であった。

林檎の木は、見るかげも無く枯れ果て、無残に倒れていた。

本来ならば、実を結ぶ筈が無い老木なのだ。

残りの生命力を全て、実を結ぶことに費やし、誰にも看取られぬまま、林檎の木は静かに朽ちていった。





この話は、せめてもの俺からの慰めです。
あの男の子が、明るく育つよう願ってやみません。