特徴を伝えると、三十分ほど前に見かけたという。
玄関を出て左側に向かったらしい。
見ると、雪が舞い始めている。
佐藤さんは寒いのも構わず、玄関から飛び出した。
よちよちと歩く今田さんの姿が目に浮かぶ。
それほど遠くには行けない筈だ。
少し泣きそうになる自分を叱咤しつつ、道を急ぐ。

「ああっ」
思わず声が出た。
道の向こう側に水色のカーディガンが見えた。

「今田さん!」
呼びかけられ、驚いたように顔を上げた今田さんは、
まるでイタズラを見つかった子どものように顔を赤らめた。

「もう、いったい何処に行ってたんですか。どこか具合が悪いところは
ありませんか」

「ありゃま、ごめんねぇ、ちょっと行って帰ってくるつもりがね、
思ったより時間かかっちゃって」
そう言って今田さんは柔らかく微笑んだ。
コンビニの袋をぶら下げている。

「コンビニに行ってらしたんですか?」
往復で1kmはある。この寒さの中、よく無事にと佐藤さんは
改めて胸を撫で下ろした。

暖かい部屋に戻り、事情を訊かれた今田さんは、袋をあけた。
中から取り出したのはバレンタインの包装をされたチョコレートだ。

「これをね、買ったの。おじいちゃんとおばあちゃんに
なっちゃったけどね、毎年あげてるの」
病院の売店には、包装されたチョコが無かったらしい。

「でも、それだったら私に言ってくだされば買って来たのに」
佐藤さんがそう言うと、今田さんは朗らかに答えた。

「大好きな人にあげるチョコを他の女の人には頼めないわよ」