「どうですか、後藤さんの様子」

「はい、皆さんの励ましのおかげで何とか持ち直しました。
本当にありがとうございました」

「い、いえ、ご存知とは思いますが、あれは作り物のホタルですから」
何故だか顔をあからめる熊である。
日常生活では、女性と話すのが苦手なのだ。

「そうそう、これ、おじぃちゃんから預かってきました。」
手紙を熊に渡し、美雪はもう一度、深く頭を下げ立ち去った。

白い封筒には、後藤の手書きであろう、ホタルの絵が描いてあった。

開けてみる。

『つくね亭の熊さんへ。昨日は、ホタルを届けてくれてありがとう。
おかげで元気になれた。感謝する。

どうやって作ったか判らんが、よく出来たホタルだった。
だが、わしの目は誤魔化せん。

あれを作ったのは、東京出身の人だな。

関西と関東では、ホタルは点滅速度が違うんだ。
昨日のホタルは関東出身のホタルだったよ。

だが、ありがたかった。何よりも、わしの心にホタルが
舞ったような気がした。

今度は頑張って、関西のホタルを熊さんに見せてやるからな」


熊は頭をかきながら、大声で笑った。
通りかかった黒猫がびっくりしたように熊を振り返った。

今日はホタルイカにしよう、熊はそう決めた。