夜7時。夜間練習を始める時間になった。
音楽関係のクラブが合宿できるような
ホテルには、結構しっかりしたスタジオがあるのだ。

このホテルのスタジオは地下室にあった。
10畳ぐらいの部屋に、先ほど借りた
機材を設置した。ボーカル用のマイクを三本。
Y社のアンプ。

さっそく練習開始。後輩達が5人見学に来た。
俺達のやってるのはコーラスワークが決めての
ウェストコースト系ロック。
当然、コーラスの練習を始めた。

「ストップストップ。乱蔵、おまえハズレてるよ。」
「そうかぁ?すまん。もいっぺん頼むわ。」

何度か繰り返した時、後輩の一人が手を挙げた。

「はい。Mちゃん。なに?」
「…先輩達、聴こえませんか?」
「何が。」
「苦しんでる男の人の声です。」
「はぁ?」
「聴こえるんです。もう一度やってみてください。」

やってみた。そして俺達はハッキリと聴いた。
地の底から響いてくるような男の声。
何と言っているのか判らないが、確かに聴こえた。
それが合図だったように、次々と異変が俺達を襲い始めた。