「ほう。さすがジャポネゼだな。カミカゼってやつか。
いいとも、勝負は何だ」

「ゴリラは泳げるか」

「はぁ?」

「ゴリラは泳げるか、だ。俺が勝ったら、10ドルは無しだ」

エディは、その大きな鼻から息を一つ吐き出した。
笑ったらしい。
「木村。財布でも拾ったか?えらく気前が良いな…
NON,だ。ゴリラは泳げない。誰だって知ってる」

木村は窓から離れ、大股でエディに近づくと、手にした
ボトルを取り上げた。
「残念。10ドルは無し。このボトルの代金はお前持ちだ。
窓の外を見てみろ」

一度だけ木村を睨みつけ、エディは窓辺に寄った。
桟橋を見つめ、信じられないとばかりに叫ぶ。
「なっ!なんだよあれは!何でゴリラが港を泳いでるんだ?!」

クォバディス号を目指して、懸命に泳ぐゴリラがいる。
さっそうと、というわけにはいかないらしい。
犬かきにも似た泳ぎ方で、ほとんど溺れかけているようにも見える。
だが、意外な速度でゴリラは船に向かっていた。
船員達はまだ気付いていない。


五へ