「よし、よし、そのままそのまま…くそっ!」
最後の最後に、船はバランスを失った。
立て直す間も無く、真吾は激しい衝撃に意識が遠のいた。

(あれは…花畑か…?)
真吾が最後に見たものは小さな花畑だった。


『とうさん…父さん、早く帰って来て…』

「あ、あぁ、待ってろよ…今すぐ、今すぐ帰るから」
いつの間にか声に出していることに真吾は気づかない。
自分の声で目が覚めてしまった。
真吾が最初に見た物は冷蔵庫だった。
冷蔵庫は忙しげに動いていた。

(冷蔵庫が動いてる…)

箱の上に頭が付いていた。
丸い目玉。丸い鼻。横一文字に開いているのが
口であろう。
その口から声が聞こえた。

『オメザメデスカ?
ドコカ イタム トコロハ アリマセンカ』

「冷蔵庫が喋ってら…」
どうやら箱の下に車が付いているらしく、
キュルキュルという音を立て、冷蔵庫は近づいてきた。