「その使い魔が俺に何の用だ、と言うのもおかしいか。
用事が有るのは俺の方だからな。
なぁ、あんた。トマムってのは何のことだ」

リンネは、貞淑な表情を変える事なく、小さく手招きをした。
「判りました。わたくしの知っている範囲の事をお教えいたしましょう。
耳を貸してください」

ほとんどの人間がそうであったように、トマムもまた、リンネに
騙されてしまった。
何の疑いも無く耳を近づける。
リンネは右手をトマムの耳に添えて話し始めた。
「実はですね、トマムというのは…」

その言葉と共にトマムの耳に入ったものがある。
リンネの右手の爪から放たれた虫である。
細く小さな虫が、トマムの耳に飛び込んだ。
途端にトマムの顔つきが虚ろに変わった。

「うふふ。さぁ、最初の任務を与えます。
お前が世話になった村に戻りなさい。
貴方の腕をグルカ様にお見せするのです。
そんな鈍らな刀は捨て、この剣を使いなさい。
これは持ち主の意識に呼応して、その鋭さを増す剣。
今のお前なら、この世に切れぬ物は無い」