子供達が羽織るコートにも、寒気を遮断する魔法がかけられている。
それでも夕刻を過ぎると簡単な魔法では、防ぎきれない寒さが村を覆う。
子供達は明日の約束を交わし、家に帰っていく。
それぞれの子供達に暖かい家と夕食が待っているのだ。

「テリシア、また明日ね」

「うん。いつものところでね」
テリシアと呼ばれた少女は、大きく手を振って友に別れを
つげると、家に向かった。
オレンジ色の暖かなフードから長い髪が覗く。
その色は、艶やかな黒であった。この地方には珍しい色であったが、
テリシアは己の髪をいたく気にいっていた。

「かあさま、ただいまーっ。おなかすきましたー」

マリアが振り向かず、笑いながら答えた。
その髪は白に近い輝くような金色である。
「手を洗ってらっしゃい。すぐに夕食にするから」

「えー?でも雪以外触ってないから綺麗だよ?」
寒さの為に、まだ赤みの残る頬を両手でさすりながら
テリシアが不満気に言う。

調理の手を休め、マリアはしゃがみ込み、テリシアと目線を合わせた。
「あら。綺麗に見えるものでも、汚れてないとは限らないわ。
さ、早く洗ってらっしゃい」

実は、テリシアは母に目を合わせてもらいたかっただけなのだ。
「はーい」
と明るく返事すると彼女は手を洗いに向かった。


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