母と姉が大喧嘩した
事がある。

それは、姉が成人に
なる年。

振袖を作ろうとする
母に、姉が逆らった。

「そんなもんに使う
ぐらいなら、その金で
何か資格を取る。」

「一生に一度の事や。
お母ちゃんの意地でも
ある。着ろ。」

この繰り返し。

いよいよ俺の出番だ。

「まぁまぁ、ここは俺
にまかせて。
アネキ、おかんの夢
やからレンタルで
借りて、袖だけでも
通したらどうかなと。」

んぱしっ!

両方からの平手打ち。

「あんたぁ、そういう
小賢しい知恵で
お母ちゃんが納得する
とでも思ったの!」

「そやで、金を使いたく
ない、って言うてるの。
若者らしくない知恵を
出すな!」

もう滅茶苦茶である。
すごすごと部屋に
引っ込む俺の後ろで
二人はまだ、喧嘩を
続けていた。

結局、母が折れ、姉は
ジーンズにセーターで
出かけていった。

母が用意したお金は
そのまま姉の資格取得
に使われた。

姉は、少しでも家計を
助けたかったらしい。

俺が成人式を迎える
年、母は既にスーツを
作っていた。

「振袖と違って、毎日
でも着る事ができる。」

と自慢気に胸を張った。

成人式を終え、帰宅
した俺を出迎えたのは
鍋一杯のおでんと、
一升瓶二本。

「友達と飲むんやろ。
勿体無いから家で
飲み。」

あの日のおでんと酒、
今でも仲間内で話題に
なるぐらい美味かった。