「あのね。恵美。」

「はいな母さん」

「側に居ると『よし、がんばるぞ!』とか『大丈夫、あの人が
居るから』とか思える相手だったのよ、父さんは」

薔薇の香りが部屋に満ちる。
それと共に、尚人の優しさが部屋に満ちるようである。

「母さんはね、父さんがいてくれるから頑張ってこられた。
あんたをここまで育てる事ができた。
父さんがいるから、守ってくれているから、そう思えるだけで
頑張れた。
恵美、それが人を愛するってことよ」

「母さん…」

朋子は、恵美の頭を優しく撫でながら続けた。
「それにね、単身赴任ったっていつかは必ず逢えるのよ。
父さんも単身赴任中だけどね、母さんはいつか必ず逢える。
今、父さんと母さんは長距離恋愛中なの」

「母さん、判った。ありがとう、本当にありがとう。
今までお世話になりました」

「あら、もうそんな挨拶?」

「これからも何かとお世話になります」
なんでやねん、と突っ込みながら、朋子は大声で笑った。
恵美も笑っている。
笑いすぎて涙が出たということにするつもりなのだ。

おわりへ