その夜も福は街に出た。 
昨日の事件の影響で警官が
溢れているかとも思われたが、
全く増員はされていない。
どうやら警察はグループ間の抗争と判断したらしい。

いつもと同じく平穏な夜が訪れようとしていた。
福は、ビルの屋上にいた。
あの犬がいた十字路が見える。
今夜は現れないかもしれないな、
そう呟いた瞬間、

「わたしに何か用か。」
突然呼びかけられた。

福がこれほどまでの至近距離を取られたのは、
先生以外では初めてである。

だが、福も並の犬ではない。
跳躍する姿勢も取らぬまま、横っ飛びに5m離れた。
着地した時には既に相手を正面から見据えている。

黒い犬がいた。
「…この国には変わった犬がいるな。」

「この国には、ということは。
やはり貴方はイギリスから来られたのですか。」

「ほほぅ。判るのか。」

福はいつでも変身できるように身構えた。