「あ、あぁ。里美がそう言うなら…ムアンギ、無事だったか?」

「うん、先生ごめんなさい。里美先生守れなかった…」

里美が突然呻いた。
「どうした?里美っ!」

「ち、ちとヤバイっす。産まれるかも…」

俊輔が息を飲む音がハッキリと聞こえた。
「ど。どうしたらよかとですか」

里美は調べ上げた資料をテーブルから取り上げ、俊輔に突き出した。
「あんた何処の生まれだ。いい、俊輔。
隣村にオカンボという助産婦さんがいる。すごく腕が良いらしいわ。
その人を連れて来て。それまでは何とか頑張るから。
ムアンギくん、ここで手伝ってくれる?」

言葉も無く蒼ざめるムアンギの肩をポンと叩き、俊輔は
笑いかけた。
「頼むぞ、ムアンギ。今だけは、俺たち夫婦専属の兵隊になってくれ。
守って欲しいのは、産まれてこようとしている俺達の宝物だ」

ムアンギの瞳に光が宿った。
「任せてください。俊輔先生。今度こそぼく、やります」

「じゃあ里美。行ってくる。必ず連れてくるからな」

親指を上げる俊輔に里美も同じように応えた。
「頼みますぜ、旦那」



十一へ