飛び出したとはいえ、当てがあるわけではない。
「あ、そうだ」

近所に、早朝から開いている喫茶店がある。
そこならばもしかすると、祖母を目撃しているかもしれない。

奈々子の予想は見事に当たった。

店主が見ていたのだ。
「あぁ、ユイさん?ええと…うん、確か駅の方へ向かったね」

「駅…」

とりあえず、携帯を取り出し、母に連絡する。

「母さん?あたし。見た人が居たよ、駅に向かったって」

携帯の向こう側で母が絶句している。

「あたし駅に行くから、母さんも早く来て」

言い残して走り出す。
幸い、駅員も祖母を目撃していた。
自販機が使えない祖母に代わって、切符を買ってくれたのだ。

「確か…県庁に行きたいとか仰ってましたね」

「県庁!?何の用があるのかしら」

息を切らして駆けつけた母に、事情を説明しながら、奈々子は大分市への切符を買った。

「母さんは家で待ってて。連絡が有るかもしれない」

うんうんと心細けに頷く母に、大丈夫だからと手を振って奈々子はホームに向かった。

大分駅前からバスで5分、大分県庁前か…
丁度やって来たバスに奈々子は飛び乗った。

三へ