するするするぅっと、残りを開けました。

「ほれ見ねぇ、八方…ふさがり!…え。」

「こりゃまた悪いねぇ。八方ふさがりか」

「く、くそ。大家さん、もいっかい引かせてよん」

「気持ち悪いね…いいよ引いてみな」

「ありがとうござい。よし、今度は八の半分、四だ」


四と書かれたクジを広げます。

「四苦八苦…ぐぅ」

「おや、先にぐぅの音を出されたか。なんなら好きなだけ引いてみな」


八っつぁん、むきんなって引きます。

「一文商い」

「一文ずつの細かい商いのことだな」


「二束三文」

「良くないねぇ」

「三行半」

「そりゃまずい」


「五逆の罪」

「仏教で最も重い罪だな。」


結局、全部の数字が縁起が悪い。

「なんでぇなんでぇ、ずるじゃねぇか。こんな数字なんかに振り回されてたまるけぇ」

「はい、八っつぁんがイイこと言いましたよ」

「え」

「数字なんかに振り回されてたまるけぇ、だろ」


「あ」


「おかみさんと験かつぎ、どっちが大事だい?」

八っつぁん、思わず頭を下げました。
下げ過ぎて五体投地してしまうぐらいでございます。

「わかった。わかりました。もう、八の字にはこだわらねえ」

「本当だな?間違いないな?よし、出ておいで」


「あ、おまつ!なんでぇ、最初から居たのかよ」

「おまいさん、本当に験かつぎは止めてくれるんだね?」

八っつぁん、にっこり笑って答えます。

「一番大事な、二人と居ないかかぁだ。これ以上苦労はかけらんねぇよ」


三三九度じゃなくて散々苦労だったな、
そう明るく笑います。

おだやかな秋の日の出来事でございます。

おあとがよろしいようで。