ところが奥さん、それでも納得できない。
悋気、というわけでもないのでしょうが、時が時だけに
気が急くのでしょうな。
哀れに思った旦那、こう約束しました。

「よし、そうまで言うならこうしよう。もしもわたしが後添えを
もらうようになったら、その婚礼の晩に幽霊になって化けて
出ておいで」

あぁ、そこまで言ってくれるのか、と奥さん安心した途端
ぽっくりと逝ってしまいました。
旦那は、しばらくは泣きの涙で過ごしておりましたが、
おまんまは食っていかなきゃなりません。
もともとが腕の良い職人でございます、その上に
奥さんを亡くした悲しみを仕事で晴らすしかない。
名は売れる、暮らしぶりは良くなる。
さぁそうなると親戚筋が黙っていない。

後妻は貰うつもりは無い、と嫌がるのをあの手この手で
説教する、問い詰める、泣き落とす。
職人てのは、奥さんが居ると、より一層仕事に精が出るもんだ、
そう言ってきます。
仕事を回してもらえる親方も一緒になって説得するもんだから、
とうとう、もらわなくちゃ仕方なくなってしまいました。

三へ