竜馬は四条通りを西へ向かっている。
途中、甘栗を買い求め、食べながら歩いていた。
侍とも思えぬ様子だが、もとより竜馬には身分に
縛られるなどという窮屈な考えは無い。

「まっこと、万昌堂の甘栗は絶品じゃの」
すれ違う人が、その言葉を耳にして笑う。
これから一戦交えようかとしている男には、まるで見えない。
だが竜馬を良く知る人が見たら、その顔色に驚いただろう。

目が違うのだ。
普段の人懐こい目が、細く鋭い光を宿していた。

「坂本。怖い目をしちょるな」
長州藩邸に向かおうと急ぐ竜馬を呼び止める者がいる。
振り向いた竜馬が、一瞬、息を呑んだ。
この男にしては珍しく、心底から驚いている。
無理も無い。

そこに立っているのは、江戸に居るはずの千葉周作であった。
竜馬にとっては、大恩ある師である。
「いつ、こちらへ来られたのですか」

「うむ。つい先日だ。世情を憂いてな、老体に鞭打つことにした」

「それはまた無茶なことを」
少し話そうか、と誘われ竜馬は堀川通を下った。
広い空き地がある。
そこで千葉周作は足を止めた。