大会当日。
雲一つ無い青空が広がる。
源次は、芳美が運転する車で会場に入った。
大勢の熱気に少し気圧されてしまう。

(ほんとにわしにできるのかな。えらいところに来てしもうたな)
不安を顔に出す源次に、芳美がバンダナを渡した。

「なんだね、これ」

「勝利のおまじない。あたしからのプレゼント、源さんと
テルとお揃いよ。巻いてみて」

赤いバンダナは、源次とテルに良く似合った。
テルも嬉しそうだ。

「それね、弟がしていたバンダナ。使って」

「そんな大事なもの、構わんのかね?」

「弟はね、最後の最後まで、もう一度大会に出るんだって
頑張ってたのよ。…源さん、代わりに夢を叶えてあげて」

源次はもう一度赤いバンダナに触れてみた。
あれほどの不安がどこかに消えた。
自ら頬を一つ叩き、気合いを入れる。

「どれ。行くか、テルよ」

「源さん、こうやってみて」
芳美が右の拳を上げた。
親指だけが突き出されている。

「こうか?なんだい、これは」

「サムアップって言うの。ばっちり決めるよ、っていう印」

「ふむ。なかなか格好いいもんだな。よし、行くよ、芳美さん」
源次のサムアップに芳美も笑顔で応えた。


十へ