両親が朝からまた、パチンコ屋に向かったのを見送り、
三人は必要な物を全てカバンに詰め込んだ。
服、下着、タオル、歯ブラシ。隆司は遠足気分だ。
麻美はお人形さんが有ればそれだけでいいらしい。
幸一は両親のタンスを探った。
金が有れば持っていくつもりである。
二段目の引き出しから、一万円だけ見つかった。
持っていくのに何のためらいも無かった。

いくら地獄といえども、住み慣れた部屋を出ることは、
不安と寂しさを幸一に与えた。
が、それよりも、これで三人の命が助かるという喜びの方が大きかった。

予想していたよりもアパートは綺麗だった。
裏の窓を石で割り、中に入る。少し黴臭かったが、
そこにはまだ、テーブルも机も、ベッドもあった。
さすがに布団は敷いてなかったが、三人にはそれで充分だ。
幸一の予想は一つだけ、嬉しい方に外れた。
水が出たのだ。
これで、飲料水と体を拭く水には事欠かない。
なんとか上手くやっていけるかも、と幸一は淡い希望を抱いた。

もちろん、両親が警察に捜索願を出すかもしれない。
夏休みが終わったらどうするかも決めていない。
けれどとにかく、今ここに両親の姿が無いことは確かだ。
そしてそれだけで、幸一達にとっては天国であった。

その夜、畑からとってきた西瓜と、スーパーから万引きしてきた
メロンパンをテーブルに並べた。

「見ろ、スイカとメロンだぞ」

誇る幸一の前で幼い弟と妹は目を輝かせた。
「ほんとだ、兄ちゃんすげぇ」
「ぜんぶたべていいの?」
「あぁ。ゆっくり食べるんだぞ」

美味しそうに食べる二人を見ているだけで、幸一の胸は
一杯になった。

五へ