彼女は、カバーマークという化粧品で痣を隠していた。
彼女自身は、それをよしとしなかったが、母親が己を責める姿を見るのが忍びなかったらしい。
御存知ない方がほとんどだろうが、カバーマークというのは、一種のファンデーションである。
使い方によっては、完璧に痣を隠せるのだ。
おかげで学校生活は支障無く過ごせていた。

が、思わぬ伏兵が潜んでいた。
修学旅行だ。

修学旅行中、どうしてもカバーマークを塗り直す時がある。
その時、彼女の顔半分に痣があることがバレてしまうのだ。

彼女よりも母親の方が、その事に悩み、追い詰められた。
旅行の前夜、とうとう母親は娘を手にかけた。

号泣しながら自首してきたという。


俺は学校をサボって、一日中泣いていた。

泣きながら世間を呪った。

お前らの嫌悪に満ちた視線が彼女を殺した。
化け物でも見るような好奇心に満ちた視線が、彼女を殺したんだ。

そう何度も呟き、いつの間にか眠ってしまった。
夢に彼女が出てきた。
笑っていた。
あの笑顔だ。

俺の人生を変えてくれた笑顔だ。

そして、夢の中で彼女はもう一度あの言葉を俺にくれた。


「わたし、何があっても絶対うつむかない。
じろじろ見つめられたら、真っ直ぐ見返してニッコリ笑ってやる」