「いいか、明日こそ我がぴょんちゃん寿司が地域で一番になる日だ!」
栗林店長はアルバイト従業員達に熱い眼差しを向けた。

明日はいよいよ節分である。
最近では、全国的な習慣となった巻き寿司の丸かぶりがあるのだ。

駅前の商店街にコンビニが登場するまでは、巻き寿司の販売はぴょんちゃん寿司の独壇場であった。

「しかし店長」

「なんだね」

「今年もコンビニは色々な商品を用意しているみたいですが」

むっふっふ、と栗林店長は含み笑いをかみ殺しながら答える。

「そんな事は先刻承知。海鮮恵方巻きに黄金恵方巻き、丸かぶりロールケーキを販売する店すらある。オマケとして方位磁石付き。」

「…よく調べましたね」
このところ、仕事もしないで何をしていたか、アルバイト君達を納得させる返事である。

「しかぁしっ!我々は寿司専門店!味はこちらの方が上に決まってる。
今までは、味に頼りすぎて、一工夫が足りなかったのだ」

判ったから早く先を続けろ的な視線を物ともせず、栗林店長は自慢気に皿を取り出した。

「これこそが我がぴょんちゃん寿司、最終究極商品、ちびちゃん巻き!」
子供の手のひらにも乗りそうな小さな巻き寿司が乗っている。

直径2cm、長さ6cm。
巻き寿司をそのままミニチュアにしたようなサイズだ。

「これこそは丸かぶりの弱点を突く画期的商品!」

栗林店長は、愛おしげにちびちゃん巻きを手に乗せた。

「君達ゃ、丸かぶりした事があるか?」

うんうんと全員が頷く。
「あれって途中でイヤんならんか。もそもそしてるし、黙り込んだまま延々と食わねばならんし」
ふむふむと全員がまた頷く。

「そこでこれ。ちびちゃん巻きなら女性や小さなお子様でも楽々食べられる」

なるほどーと全員が膝を打った。

「あ。でも店長、あれって幸せを呼ぶんすよね」
「そだよ」

「小さいのって、あまり幸せになれそうに無い感じがしませんか」

「う」

丸かぶりもしていないのに、全員が黙り込んだ。

「そ、それはだな……
あ。とても素敵な事を思いついた」

不適に笑う栗林店長は、すらすらとポスターを描いた。

『小さな巻き寿司には、小さな幸せがやって来ます。
無くしたはずの百円玉が見つかったり、いつもは近寄ってくれない野良猫が撫でさせてくれたり、卵焼きがうまく巻けたりするかも』

ちびちゃん巻きは爆発的に売れ、栗林店長は大きな幸せを手に入れたという。